意匠法の判例解説(1)

isyou hannrei 001

今回は、私もゴルフをした後などによく使う貼り薬(湿布)に関する判例を解説致します。
知財高裁第2部  平成21年(行ケ)第10209号  審決取消請求事件
判決言渡日  平成22年1月27日
原告 三笠製薬株式会社
被告 久光製薬株式会社
出典:裁判所ホームページhisamitsu003
どのような事件だったのか?
物品「貼り薬」に関する意匠登録第1322072号について、原告が特許庁に対し本件登録意匠は引用意匠(意匠登録第1189179号)に類似する(意匠法3条1項3号)、また、本件登録意匠は引用意匠(意匠登録第1189179号)から容易に創作できるとして意匠登録無効審判を請求しました。
そして、特許庁は「本件審判の請求は、成り立たない。」との審判を下したので、原告がこれを不服として知財高裁に審決取消訴訟を提起しました。なお、本件登録意匠は部分意匠です。
本件の争点は、次の二点です。
(1) 本件登録意匠は引用意匠に類似するか(意匠法3条1項3号)。
(2) 本件意匠は創作するのが容易か(意匠法3条1項3号)。

Ⅰ 本件登録意匠(被告)

  • 意匠に係る物品貼り薬
  • 出願日 平成19年7月13日
  • 登録日 平成20年1月18日
  • 登録番号 第1322072号
  • 意匠権者 久光製薬株式会社(被告)

Ⅱ 引用意匠(原告)

  • 意匠に係る物品貼り薬
  • 出願日 平成14年12月17日
  • 登録日 平成15年9月12日
  • 登録番号 第1189179号
  • 公報発行日 平成15年11月5日
  • 意匠権者 三笠製薬株式会社(原告)

知財高裁の結論
原告の請求を棄却するとの判決で、原告敗訴でした。
判決の内容
(1)本件登録意匠は引用意匠に類似するか(意匠法3条1項3号)について
判決は、本件登録意匠と引用意匠の以下の相違点が共通点を凌駕するとして類似しないと判示しました。

Ⅰ 本件登録意匠(被告)

  • 帯状部がある
  • 中央分離帯部が濃青色で、帯状部が淡青色である

Ⅱ 引用意匠(原告)

  • 帯状部がない
  • 全部透明である

(2)本件意匠は創作するのが容易か(意匠法3条1項3号)について
判決は、本件登録意匠が帯状部をもうけて、その帯状部の彩色を中央分離帯部よりも明色としたことは、創意工夫を要することであるから、容易に創作できたものとは認められないと判示しました。
貼り薬の需用者(意匠法24条2項)は、判例も指摘しているように、私のような貼り薬の使用者です。私としては、同じような貼り薬の形であっても、そこに色が付いているか、透明であるかによって、かなり印象が違うように感じられますので、その点が本件の類似性の判断では大きかったように思われます。
ところで、私は、貼り薬の張り方が下手で、すぐにぐちゃぐちゃにくっついてしまって、もう一枚新しいものを張らなくてはならない羽目になります。そこで、真ん中の中央分離帯部に色がついていたり、①→②→③のように貼り薬のうえに剥がす順番が書かれていたりすれば、失敗が少なくなるように思うのですが、どこかそういうものを作ってくれないでしょうか(もうあるかもしれませんね。)

弁護士・弁理士 石川正樹